カンビールノート

毎日むずかしくてむずかしくて本当にたのしい

ママは死ぬつもりがない


死ぬつもりがないからさんざんわたしを甘やかしたんだと思う。叱ることなんかなかったって。

「だってなにが欲しいとかわめくこともなかったし」

それはなんでもひとつなら買ってもらえたからだと思う。わめく必要がなかったんだもん。


たぶんわたしは4才くらいまでパパの顔を覚えられていなかった。仕事でお家にいないし、休みの日は友達と釣りに行ったりしていたし。パパは帰りにいつもお土産を買ってきてくれた、セーラームーンのメンコとか。今思うとセーラームーンのメンコってなんだよなあ。マーキュリーでタキシード仮面をひっくり返してどうすんだ。


ママのパパはわたしの名前を死ぬまで間違っていたんだって。ずっとノバナって呼んでたんだって。ママは自分の子どもを抱っこして欲しくてわたしを作ったのに、自分でつけたサイコーの名前を間違って呼ばれるのは嫌じゃなかったのかな。ママはわたしのことなーちゃんって呼ぶ。そんなに気に入ってつけた名前なんだからちゃんと呼べやと思ってる。おじいちゃんはわたしが生まれた5ヶ月後にわたしのとなりのベッドで死んだ。


思い出した、ママは死ぬつもりがないんじゃなくて、86才で死ぬって決めてる。